2011審査講評

審査員からのコメント<アワード2011 審査講評より>
東 利恵

東 利恵

建築家
東 環境・建築研究所代表

応募作品全体のレベルが上がっていると思います。特に若い建築家の提案には新鮮な視点があり、全体的にも高いレベルを満たすようになっています。
環境という意味では、情報社会の進化を実感しました。世界では、フェイスブックが中東情勢を動かす力を発揮しているように、様々な情報が日本の隅々まで広がっていて、地域に関係なくスタイルとしてのひとの暮らし方が展開できる環境をつくり出してきていると感じました。
例えば、住空間デザイン最優秀賞の「FLAT」は、瀬戸内海を見下ろすという、広島郊外の住宅地にありながら、非常に都市的な、文化性の高い日常生活を送るという住まい手のスタイルがデザインでもうまく表現されています。情報社会の進化とともに、地域性では語れないスタイルの住宅が、かなりの勢いで日本各地に広がっていくのではないかと感じました。

小嶋 一浩

小嶋 一浩

建築家
横浜国立大学大学院教授

今回の審査では、「環境」と「住空間」という2つの部門の作品の差異がほとんどなくなってきたことが、深く印象に残りました。昨年までは、「環境」的に優れた提案は、正直なところ「住空間」が今一歩で、一方の「住空間」に優れた提案は、断熱さえ怪しかったりするものも散見されるといった具合で、グランプリを取ったのは文字通り双方を兼ね備えた稀有な作品でした。
その点、今回は、例えば環境デザイン最優秀賞の「所沢の家」は、どちらの部門で受賞してもおかしくないし、グランプリとも紙一重でした。住空間デザイン最優秀賞の「FLAT」も、その土地ならではの環境に、住まい手のライフスタイルを踏まえて、ポリシーを持って応答している点で同じことが言えます。
そんな中で、派手さはないけれども、高いレベルで双方を統合した「石神井の家 Pioggia e Sole」がグランプリとなったのは、このアワードの成熟度を示しています。
それは、取りも直さず、環境に配慮した住空間ということがキャッチフレーズのレベルを超えて、社会に根付いてきたことを反映しているように思われます。審査会やシンポジウムでの議論も、そうしたことを反映した深度のあるものとなってきており、私自身が審査員として関わっていて、たいへん面白いアワードです。

宿谷 昌則

宿谷 昌則

建築環境学者
東京都市大学教授

ずいぶんレベルが上がってきたとの印象を持ちました。以前は、環境工学的な意味での環境デザインと、いわゆる意匠性を強く意識した建築デザインとを、ただ単に寄せ合わせたような作品が多かったように思います。
前者は、光や熱・空気の振る舞い方(カタ)のデザインで「機能」にかかわること、後者は目に見える形(カタチ)、見映え姿のデザインで("かまえ"や"つくり"という意味の)「構造」にかかわることです。このような機能と構造は、同じモノの2つの側面という関係にありますが、両者がだんだん近付いてきて、まさに融合した本物のデザインになってきたように思います。
上位作品に共通していたのは、視覚的なデザインとともに放射熱のコントロールにチャレンジしていた点です。放射熱のコントロールとは実は光環境のデザインと相同なはずなので、そこに注意が向けられ始めているのは面白いことだと思いました。
応募資料にあった住まい手のコメントを改めて読んで、強く印象に残ったこともあります。結果として「環境デザイン」が優れている住宅は、住まい手が実際に住み始めて以後、「環境」の面白さを発見して、それを楽しめるような仕掛けになっている点でした。

千葉 学

千葉 学

建築家
東京大学大学院准教授

少し前までは、環境といえば、高気密・高断熱や日射のコントロールといった比較的わかりやすい教科書的なアプローチが目立ちました。しかし、今年はそうしたアプローチが後退して、もっと一人ひとりが自分にとっての快適な環境とは何か、といったことを追求しているような、そんな環境との対話が強く感じられる作品が多かったと思います。
環境デザイン最優秀賞の「所沢の家」はその好例で、この場における快適な環境というものを、設計時だけでなく、住み始めてからも様々な形で模索し続けています。住空間デザイン最優秀賞の「FLAT」は深い軒をもった住宅ですが、それがいわゆる和風デザインに短絡するのではなく、新しい造形の可能性を見せてくれているところが最大の魅力です。同時に、住まい手にとっての快適な季節感というものを追求しており、その結果としての造形であることにも強く共感しました。
環境デザインというのは本来、何か一つの正しい答えがあるようなものではなく、むしろそれぞれの人が個々に環境を読み取り、それに対する個別解を見つけていくべきものです。今年は、そうした姿勢を強く感じられる作品が多く、環境デザインの成熟を感じました。

池田 俊雄

池田 俊雄

東京ガス株式会社 営業第二事業部長

私は、今回初めて審査員を務めました。まず感じたのは、「環境」というキーワードが今や特別ではなくなっていることでした。住まい手の方々もいろいろと研究するようになり、その環境的なニーズが必ず暮らしの中で具現化されるようになっています。
私たちエネルギー事業者としても、こうした時流に乗り遅れないようにしなければならないと実感しました。高効率給湯器や分散型発電設備などをさらに追求し、限られた資源や自然エネルギーを上手に使いこなしながら、住まい手の生活価値が上がるような取り組みが必要だと痛感した次第です。

工務店部門
安達 功

安達 功

日経BP社 建設局プロデューサー

環境の時代に向けて地域密着で活動する住宅会社の存在意義は増しています。竣工後の維持管理、高齢化への対応、国産材の有効利用など対応すべき課題も多く、地域に根を張り設計・施工を一貫して手がけるビルダーならではの解に期待します。

澤井 聖一

澤井 聖一

株式会社エクスナレッジ
代表取締役社長

アワード2010では、リノベーションのほか、多世帯同居型の住宅も増えていました。単一家族でも家族間の距離の取り方が難しい時代に、多世帯ではどうなるのかと関心を抱いて見ていましたが、残念ながら妙案を示す作品はなく、今後に期待します。

暮らしデザイン部門
坂本 二郎

坂本 二郎

「LiVES」編集長

内部はもちろん、周囲、そして将来の環境との繋がり方まで。 住宅デザインが担わなければならない課題は、ここ数年で大きく広がっています。そんな中で、これからの住宅のあり方を示してくれるような提案に出会えることを期待します。

下田 結花

下田 結花

「モダンリビング」編集長

各作品が高いレベルで拮抗している中、特に最近目立つリノベーションは、制約の大きさの裏返しとして、明確な個性を持った興味深い提案が目立ちました。今後は、小さくても豊かな自然や多様化する家族形態に対する新提案もさらに期待しています。

鈴木 康之

鈴木 康之

「SUMAI no SEKKEI」編集長

設計者によって「環境デザイン」の解の導き出し方は、回を追うごとに深くかつ広がりを見せています。しかし、都市の密集地という厳しい環境の中で、家族のために「どう環境をデザインするか?」という解が少なかったので、今後の楽しみとしたいと思います。

follow me