過去受賞作品

2010 シンポジウム

日時:2010年2月22日(月)15:00~18:00 終了しました
会場:リビングデザインセンターOZONE 3F パークタワーホール

受賞者プレゼンテーション

ムービーレポート
2010グランプリ
豊崎長屋
設計:大阪市立大学生活科学研究科
   竹原・小池研究室
施工:山本博工務店
PLAY long
ロングバージョン 約25MB
PLAY short
ショートバージョン 約6MB
 

 

パネルディスカッション

パネルディスカッション

2010年2月22日、住まいの環境デザイン・アワード2010シンポジウムが開催されました。
「ポスト『モデル家族』時代の住環境を探る」と題したパネルディスカッションの概要を紹介します。

パネラー 東 利恵(建築家/東 環境・建築研究所代表)
小嶋 一浩(建築家/東京理科大学教授)
宿谷 昌則(建築環境学者/東京都市大学教授)
千葉 学(建築家/東京大学大学院准教授)
青沼 光一(東京ガス株式会社 執行役員 リビング法人営業本部)
コーディネーター 澤井 聖一(株式会社エクスナレッジ 代表取締役社長)

澤井首都圏の新築住宅では、親との同居世帯が急増しており、50%弱を占めるまでになりました。かつて標準世帯と言われた、夫婦と子ども2人というような家族像は、確実に崩れ始めています。今の社会における人と住空間との関係をどう見ていますか?

千葉確かに最近、設計した住宅の住まい手も、モデル家族ではなかったですね。そもそも家族構成の変化というのは、いくら設計時に考えても、結局は予想しえない形に変わっていく可能性が高いわけです。ですから、家族像をイメージして設計すること自体を見直したほうがいいと、僕は思っています。
もっと本能的な、あるいは人間の動物的な側面から考えたほうがいいのではないでしょうか。2人でも、4人でも、何人か集まって暮らす場合に、それぞれがほどよい距離を保ちつつ、個々に居場所を見つけられるような住空間のあり方があるはずです。そういう空間は、多様な暮らし方を許容する可能性を持ち、家族構成が変わった途端に成り立たなくなるような脆弱な住宅ではなく、長く住み継がれていく住まいになるのではないかと思います。

大半のマンションや建売住宅は、今でもnLDKという形で売られ、各部屋に「リビング」や「寝室」といった特定の機能を与えています。しかし、同じ3DLKでも、実際の居住者は、家族ごとに全く違う使い方をしています。画一的な間取りでしか販売されていない住宅を購入して、自分たちの生活をそこに当てはめて暮らしているわけです。
そうした実態を踏まえると、そろそろ私たちは、機能を限定するような部屋の名前を捨ててもいいような気がします。機能や空間をもっと自由にとらえたほうがいいのではないでしょうか。

小嶋部屋に「寝室」という特定の機能を与えるようになったのは、戦後の数十年のことです。もともと日本の民家は田の字型プランが基本で、しつらえを変えると、ほかのアクティビティにも使えるという多様性を備えていました。ちゃぶ台を置けばリビングになり、布団を敷けば寝室になったわけです。
今回のグランプリ「豊崎長屋」もそうですが、最近の住宅の中にも優れたものは、そうした多様に使える空間を持っています。

澤井外部環境と住空間との関係性についてはどう考えますか?
 
 
 

小嶋高度経済成長期以降の日本の住宅は、外部を切り離して、ひたすら内部を追求してきました。それを前提に、エアコンや冷蔵庫といった家電の並ぶアメリカ型の家が一般化してしまったのが現状です。しかし、そういう認識を変えるべき時期を迎えています。
これからの住宅は、外部の環境とコミュニケーションを学習する「道具」であるべきです。内外を絶縁すると、人間も地球もどんどん壊れていってしまう。家づくりのプロである設計者が、外部とのかかわりを考慮せずに住宅を設計したら、不合格の烙印を押される時代を迎えているのかもしれません。

宿谷設備機器で構成されるアクティブ型の技術は、住まいの内部を個別の空間に仕切り、個々の空間でアクティビティが完結できるよう発達してきました。人と人、あるいは人と自然とのコミュニケーションが貧しくなった一因は、そこにあるように思えます。
ところで今、多くの設計者が住宅を外部に開きたいと考えています。その発想には私も賛成ですが、誤解している向きが少なくないように思います。誤解とは、断熱・気密は家を閉じることと考えて、これらの性能確保に無関心あるいは無視することです。
実のところ断熱・気密をしっかりとれるようにすると、家は開けるのです。断熱がしっかりしている家は、外部の影響を受けにくいので、冬は壁や窓の室内表面温度が外気より高く、夏は低めに保てます。例えば、冬に空気を入れ換えるために窓を開けると、冷たい風が入ってきますが、窓を閉めればすぐに室温はもとに戻ります。逆に、断熱性が低い部屋では、室内の表面温度がそもそも低くなっていますから、窓を開けたら寒くて仕方がない。断熱や(窓を閉めたときの)気密は、開いても快適で、しかも暖房や冷房に使用するエネルギーを無駄にせずに済むのです。

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